カイザーのノウハウを自分流に取り入れてみた
少しずつグレードアップして200万近くも掛けたカーオーディオも期待通りの音にはなってくれず、気分一新する意味でホームオーディオを始めたという珍しいパターンの方です。
そのH.Kさんは、ローゼンクランツのウェブ内のノウハウを参考に色々試みた結果、かなり希望の音に近づいたとのご報告を頂きました。その詳細はQ&Aのコーナーに掲載してあります。
そして、ご自分なりに納得が行ったのか、あるいは限界を感じたのか、クリニックを受けてみる気になったようです。もっとも一番の動機は私が強くお勧めしたからだと思います。
訪問前にオーディオシステムと部屋の写真を頂いていると、現地で考え込む事も無く、クリニックやセッティングの作戦が練り易く、スムーズに事を運べるので大変有難いです。
真っ先に目に入って来たのが、サウンドステーションと同じ寸法で作ったと思えるスプルースの無垢ベースです。ごつい方が良いと思うのでしょうか、ちょっとやり過ぎの感があります。でも、何より寸法比が優れているので大いにプラスに働いてくれるでしょう。
前後、左右、裏表、方向性がことごとく反対
それは良しとしても、今回の一番大きな問題はスタンドも含めてそれら素材の方向性がことごとく反対になっている点です。具体的には、スピーカー台の柱の部分を受け持っている金属の脚が横向きにセットしていたり、ベース材も根から枝先に向けての方向が左右に向いているので、音楽のエネルギーが横に流れて聴き手に向かってこないのです。まるでミュージシャンが舞台の袖に向けて歌ったり演奏しているような感じを受けます。
これでは音楽が生き生きと鳴るはずがありません。それでもインシュレーターの導入でかなり良くなったそうですが、私が聴く限りけっこう重症であります。
最初に手掛けたのはラックです。柱の部分は構造上天地の向きの変更が効きませんのでそのままに、棚板3枚を配置転換し、一番下に持ってきた板だけを天地反対にしました。勿論ネジの組み替えもしました。要するに加速度組み立てというやつです。
振動の方向性を揃える事が如何に大切か
スピーカーユニットが前後に動く事だけで音になるのではありません。勿論それが一番大きいのは間違いないのですが、音楽エネルギーというものは全ての物体の振動が引き起こす空気の波動で感じるのです。
スピーカー台、ラックの棚板、機器の筐体、インシュレーター、はたまたケーブル1本に及ぶまで、あらゆる物体の振動の方向性が影響し合います。
言うなれば、コンポーネントやアクセサリーの各々が違う楽器を手にしてセッションに参加していると考えるべきです。
そんな微細なところにいち早く目を向け、セッティング時にミクロンレベルの技術と感性で取り組んでいるのは、世界中を探してもカイザーサウンドしかないと思います。
ラックの次に取り組んだのは方向性を是正する為にスピーカースタンドの左右のパーツの適正な組み換えです。微細な砂が充填されているので一度に天地の板を外してしまう事は出来ません。
偶然というか運良くというか、お互いのパーツを交換しながら上手く理想の方向性を持たして組み直す事が出来ました。以下の写真がクリニック前とクリニック後です。
スピーカーの加速度組み立て
最後はスピーカーの加速度組み立てを施して今日のクリニックは終わりです。最近の43シリーズは初期の4311あたりと違って、ユニットの配置がインラインに変ってきているので、倍音がきれいに鳴るようになりました。
ですから、一時のようにJBLイコールジャズ向きでクラシックが苦手という事は無くなりました。